うえぶ.ひだまりトップページ > 特集記事 > おおらかな自然にすぐ触れられる場所

 



日置市吹上町永吉。決して大きな集落ではありませんが、戦国時代は島津氏の直轄地だった歴史もあるとか。海と山と川の豊かな自然に恵まれた土地は、武将から見てもきっと魅力的だったのでは、と想像できます。イラストレーターの大寺聡さんは、そんな集落に根を下ろし、まわりの環境を楽しみながら暮らしています。鹿児島生まれ、東京育ちの大寺さん。活動拠点を東京から鹿児島へ移したのは2000年のこと。きっかけを作ったのは、永吉で暮らしていたお祖父様の言葉です。
「お前はここへ帰ってくる人間だ、と。小学校の夏休みで帰郷すると、けっこうな頻度で言われたのを覚えています。だからこの場所にずっと愛着があって。ちょうどインターネットが普及し始め、鹿児島でも自分の仕事ができるという確信を得られたので決意しました。祖父は私が中学2年のときに他界したのですが、永吉に帰ってきたとき、地域の人に〟おかえり〝と声をかけてもらったんですよ」


大寺さんは移住後、自宅にアトリエを完成させました。通称『タイムトンネル』と呼ばれるアトリエは、現代アートのようなデザインが特徴的。それでいて、ざっくばらんな雰囲気の庭や木々が溢れる風景にも馴染んでいるから不思議です。ワークデスクの正面はガラス板のみ。椅子に腰掛けると、トンネルの楕円に切り取られた絵画のような景色に包まれるような感覚を味わえます。
「仕事中でも、モニターの中のデジタルな世界と窓越しの自然風景を行き来しています。音楽をかける時もありますが、風に揺れる木の葉の音や鳥、虫の声がBGMになることも。鳥や虫の観察も好きで、目の前の庭は野鳥が集まるように果樹を植えたりしました。でも20年経つと庭も野生的になってきて、当初の思惑とは違う雰囲気に(笑)。思い通りにいかないのも、また楽しいですね。ワークスペースからいろんな植物が見えるので、イラストの中にも直接観察できる植物や虫、鳥などが増えてきました」

 

① アトリエのアプローチから裏山へ続く小径の途中。集落や東シナ海を望めるこの場所が、大寺さんのお気に入りだ。
② 大寺さんや仲間たちの手で木立の中に開いた広場。自然の中で過ごすと自己肯定感が高まると言われており、子育て環境にもいい。「だからといって外遊びばかりを押し付けず、一緒にゲームをしたり映画を観たりしていますよ」

 


10年ほど前には、自宅の敷地からつながる裏山を購入。目的は、山を使っていろんな活動を行うためでした。
「木々に囲まれた広場を作ったので、そこで友人家族らとキャンプをすることが多いですね。火をおこして食材を焼き、食べて語らい、眠る。それだけなのに充足感があるんです」


おおらかな自然にすぐ触れられる場所での暮らし。大寺さんは、永吉や鹿児島の魅力をどう捉えているのでしょう。
「永吉は生活に必要なものは徒歩圏内でまかなえるし、無いものは生み出すこともできます。何よりこの自由度の高さは都会では得られません。ただ、自由に暮らすためには地域や人との関わりが大切。地域保全活動や自治会などには参加して、コミュニケーションを図っています。鹿児島は人口的にもちょうどよく、農家・デザイン・マスコミの距離感が近く、連携が取れている感じがします。今ある価値を見直したり、地域に興味を持ったりして欲しいですね」

 

Satoshi Ohtera
1966年生まれ。武蔵野美術大学デザイン学科を卒業後、フリーイラストレーターとして活動。2000年に東京から日置市吹上町永吉へ移住。
「OSHIKAKEデザインかごしま」「動く永吉」の仕掛人でもある。

Cover Illustration
テーマは21世紀型の小さな暮らし。
「生物多様性」が持続可能な社会を実現させるために最も重要です。
今回は昆虫やロボット達と楽しく共存しながら夕ごはんを囲んでいる様子を描きました。

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